作品名: 扇子の鞘 令和元年
Fan case of Japanese style katana 2019
製作年度: 2019/08
素材: 高級ブランドの端革、他
◉製作記でございます。
最初の扇子の鞘を作ってから一年が経過して、改めて令和元年モデルを作ってみる事に致しました。前作は衝動に任せてダダっと一日で仕上げてしまったので、今年はもう少し時間を掛けてしっかりと仕上げる方針です。出来る技も増えましたしね。
●前作は革を裁断してから木型で成型しましたけど、今回はやり方を変えて大き目に荒裁断した革を成形をして、後から本裁断をする段取りです。この段階で豚革を貼り合わせて内側に床面が出ない様にしました。何故って?その方が高級感が有って、しかも丈夫でしょう?
もう一つ理由が有って、今回表革に使った革が某高級ブランドのバッグの端革でして大変発色の良い綺麗な色目なんですが、クロム鞣なんですね。クロム鞣は可塑性が悪いって聞きますから、タンニン鞣しの豚革と貼り合わせた方が型くずれしにくいんじゃないかなと思った次第です。何事も実験ですね。
●さて、前作の反省点。“鞘”なんて名前を付けてはいますが実際に腰に差して歩いた事はありません。何故かって?帯とかしてないですからね、普段。洋服着てます。ですから腰にぶら下げる為には何かフックの様な物が必要なんです。でもDカンとかじゃ和風の佇まいが台無しになります。何せアルファベットですからね。そこで考えましたよ。そう、デザインの時間でござる。
●部品が全て揃ったら先にコバ処理をしてから目打ちをします。以前コバを磨いてから縫製したら糸の厚みでコバが波打った事があったので本当は縫い終わってからヤスリがけしたいところではあるのですが、今回は完成してからだとやり辛い所が多いので先にコバを磨いておきます。糸は#5ですから大丈夫でしょう。いよいよ組立。縫うところは三箇所で、てっぺんのトサカと中断辺りの帯と下側の箱。順番は帯を止めてから箱部分を縫って、最後にてっぺんのトサカです。帯の取り付けも少々順番を工夫して裏側に縫い目が出ない様にしてます。
●で、今回の最難関が箱部分。元々衝動的にこの扇子ケースを作った理由は、革で箱形状の物を作る時に使用される「駒合わせ縫い」と言う技法をやってみたかったからなんですね。
一年前に作った時は拙いながらもソコソコ上手く出来て、コツを掴んだ感じがしたので次からはもっと綺麗に仕上げられると思っておりました…。勘違いでした。掴んでませんでした。コツ…。この辺りが独学の難しい所です。見様見真似ですから。うーん難しい!革も選ぶでしょうし、そもそも合わせ方がなっちゃいないのかもしれません。苦労してやっと縫い上げましたが、お世辞にも綺麗にできたとは言えません。やっぱりいきなり作品に難しい技法を投入するのは無謀ですかねー。前に端革で研究して、場合によっては治具を作る努力を惜しんではいけませんね。反省。