leather works

ポケットティッシュ・ジャケット

作品名: ポケットティッシュ・ジャケット

Pocket tissue cases

製作年度: 2018/07〜

素材:革

◉今回は定番アイテムの開発のお話になります。

 

2020年現在、僕はセカンドキャリアでやりたい事をして収入を得て、作家生活をする為の修行を行なっている最中です。

 

具体的に言うと、企業の管理職として働いて家族の生活に必要な収入を確保しながら、会社を退職した後に一点物のオリジナルデザイン家具と革製品の製作販売で生計が立てられる技術と知識を身につける為に、休日を利用して創作活動を行なっている状態です。

 

この状態を「修行」と呼んでいる訳なんですが、職人を目指す修行であれば、技術の習得に重点の殆どが置かれていても良いと思うのですが、僕が目指しているのは所謂デザイナーズブランドなので、商品開発を積み重ねてノウハウやデザインアイデアを蓄積するのも非常に大切な修行となります。

 

メインの商品としては、作家性の高い一点物のアイテムで勝負したいと考えているのですが、そう言った個性的な商品は商売として見た時はリスクも大きそうです。という事でリスクヘッジの為に、ニーズが大きく、普遍性があり、長く売る事が出来る“定番アイテム”を複数持っておく事が重要になって来ると考えています。

 

さて、定番アイテムが重要だと気が付いたところで、“定番”足るために必要な要素は何なのか?を考えてみます。“定番”とは決して無個性な商品では無く、むしろブランドの個性を決定付ける売れ筋商品です。その商品を見ればそのブランドが思い浮かぶ物を指します。

また、ブランド利用の入り口として、購入しやすい価格設定である事も大切な機能だと思います。

勿論、買ってもらった方にはリピーターになって戴きたいので、使い易さや丈夫さなどの製品クオリティも高くある事が必要です。

 

書き連ねると定番アイテムの開発は非常に難易度が高い商品開発だと感じます。もう少し分解してみましょう。

売れ筋と言う観点から見ると、沢山作って沢山売るという事ですから、増産が出来ないといけません。つまり、材料費や製造時間の高効率化が出来ている必要があります。個人商店的に言うと材料費が安くてある程度在庫を抱える事が可能で、製作手間もそれ程掛からない設計が望ましいという事でしょうか。

 

ブランドの個性を決定付けると言う観点から見た時の落とし所が難しいのですが、本意気で作っている一点物の作品と同じテンションでデザインをしたのでは、おそらく万人受けからは遠ざかってしまうでしょう。作家性を出しすぎるとターゲットが狭くなります。それに、製作工程も複雑になってカロリー高くなりすぎる恐れもあります。要はメイン商品のエッセンスを一つだけ抜きとって、少しターゲットを広く取った位のデザインが好ましい筈です。

 

この辺りの設計とデザインのサジ加減こそが定番アイテム開発のキモだと思います。

 

さて、話が長くなりましたが、

このティッシュケースは定番アイテムを目指してデザインしています。今回製作した物が試作三号機です。

デザイン的に改修&挑戦したポイントは、

・ティッシュの散り出しがキツかったので取り出し口の形状を長細く変更。

・二号機で取り入れたツートーンは活かして、明るいカラーリングに挑戦。

・縫い合わせ部分にカードポケット機能を追加。

・厚みを抑える為に、蓋の二枚重ねになっている部分を一枚に変更。

・サイズを微妙に修正。

 

定番アイテムはその基本的な性能とデザイン性が高くなければなりませんので、ティッシュの取り出し安さは一番こだわらなくてはならない部分ですし、ティッシュだけではなくカードが一枚入れられる様なちょい足し機能の検討も必要不可欠なものでしょう。そしてカラーリングのバリエーションを増やしておく事も将来的に大事です。

 

一方、技術的に新たに挑戦したポイントは、

・目打ちなどの打ち込みの作業を全てプレス機(ALL−2000)に変更した。

・初めて箔押しをやってみた。

・使った事のない糸を使ってみた。(ユーフェン ポリブレイド)

・使った事のないコバ処理剤を使ってみた。(トコプロ)

 

新しい素材を使ったり、やった事のない技術にトライする事は、デザインの引き出しが少しづつ広がっていくので、これもまた大切な修行です。

 

色々と実験や挑戦の修行をしていますが、この修行期間にやらなくてはならない、ある意味一番大切な事がもう一つあります。

それは、出来上がったアイテムをキチンと「使う」事。普段使いでキッチリ使用する事で使い勝手の良し悪しと耐久性が解ります。定番アイテムは多くの人に長く使ってもらって、使われる事で宣伝になるアイテムでもあるので、実証実験で実際に長期間使って見る事がとても重要です。でも、こうやっていくつも試作を作ると一人では試用しきれないのが悩みです。

 

今回出来上がった試作三号機は、娘にプレゼントして使ってもらっています。初号機は妻にプレゼントしました。家族に協力してもらいながら、点数も稼げるWINWINな修行です。

 

●初号機は割と思いつきで作った革ワンパーツのシンプルな作品。妻はこの位シンプルでペラペラな方が好きだそうです。僕はちょっと物足らないかな。

●ポケットの中で、すぐにクチャクチャになってしまうティッシュをどうにかしたいとは常々思っていました。 ケースが有れば半端に残ったティッシュを纏めて入れておけます。



●二号機は初号機が地味だったんで、型押し革を使ってツートンに。

●裏側の継手には大好きなベースボールステッチを斜めに入れてかなり派手になりました。初号機の様なシンプルなのも良いけど、僕はこの位が好きかな。



●三号機ではティッシュが取り出しやすい様に開口部の形状を細長く変更。革の硬さにも依るでしょうけど二号機は急いで取り出すと千切れてしまう事もあったので。

●ティッシュを入れる所。入り口形状を変更してフラップを一枚に。二号機まではフラップが二枚重ねでした。

●背面の斜めのラインを右手に移してカードポケットとして使えるようにしました。交通系のカードを入れておけば財布を忘れた時のリスク分散が出来るかも。

●初めて箔押しで入れて見たロゴマーク。思っていたよりも文字の細かい部分までキチンと箔が入りました。


●明るいカラーリングの組み合わせ。ツートンだとステッチと組み合わせて三色になってバリエーションが作り易いです。初めて使ったユーフェンポリブレイドはカラーも豊富で発色も良くてイイです。全色揃えたいなぁ。

●でも、作るたびに改良のアイデアが湧いて来てしまうので完成までは…。