ヤミのストレスWEB研修

ニュースを見ていたり自身が体験した時など、色々な局面で「あぁ、俺ならこうするのに…。」と思う事がよく在る。

今回はストレスマネジメントのWeb研修について。

 

 

昨日会社でストレスチェックの研修を受けた。

 研修といってもウェブ研修なので、昔のように皆でスケジュールを合わせて集まるのでは無く、いつでも自分のタイミングで参加が可能だ。便利になったものだ。そしてウェブ研修は進化している。ついこの間までは静止画のページを一枚一枚送りながら黙読していく紙芝居の様な物だったが、最近は講師の講義動画を見て、最後に10問ほどの選択式の設問に答えるものなども多くなった。昨日受けたものはさらに進化していて、説明画面が静止画では無く、アニメーションとナレーションが付いていて、ユーザーのタイミングで先送りができると言う仕様で、さながら動く紙芝居と言うところだ。ナレーションもアニメーションもプロが作成したと思われる非常にクオリティーの高いもので、今回の研修ではストレスのメカニズムや対処法などがとても丁寧に解説されていた。シナリオ的にもおそらく不足は無いのだろう。


 直前の文末が「だろう」と推論の形になっているのは、実のところ全ての解説を見たわけではなくて、途中からかなり先送りで飛ばしてしまったからだ。どうしてクオリティの高いアニメでのリッチな解説を端折ってスキップしたかと言えば、研修の途中からこの研修を受けている事自体に強いストレスを感じてしまったからだ。

 

ストレスマネジメント研修でストレスが溜まる?

 この研修の趣旨はストレスのメカニズムを正しく理解して、その対処法を学ぶことで「ストレスと上手く付き合って仕事をして行こうよ。」と言う内容だ。それなのに、その研修自体にストレスを感じていては元も子もないと思うが、実際にそういう体験をした訳である。

そもそもストレスと言うのは人それぞれで感じる要因が違うものだ。今回の研修に対して私がストレスを感じた部分がどこかと言えば、この研修に自分の時間を奪われていると感じた所だと思う。人は自由を奪われ強制されることでストレス感じるという部分は大きい。“必修”と言われて、決められた期間のうちに受講を強制された上で、合格ラインを決められたテストまで受けさせられる事自体がストレスを感じてもおかしくは無い。しかし、それはまだ理屈で納得する事が出来ると思う。企業に求められるコンプライアンスを始めとした、社員に対する様々な周知を任されている研修担当者の立場になって考えれば、その苦労は容易に想像出来るし、そんな彼らに共感も出来るからだ。

ただ、今回はもっと生理的な部分で、我慢できない程の強いストレスを感じたのだ。

 

 今回の研修はアニメやナレーションをふんだんに使用したリッチなコンテンツになってはいる。しかし受講した僕にはそのあまりにも丁寧な解説が非常に煩わしく感じられた。もう既に理解している内容なのに、教材アニメは延々と、ゆっくり、丁寧に説明を続けてくるのである。これがなんだか非常にイライラする。倍速コントロールでも出来ればまだ良いのだが、そういったボタンは見つからない。しかも、開始時に100%の表示を得なければ終了にならないルールとの記載が有ったので、アニメの再生中に[次へ》のボタンを押して良いものか判断が付かない。脇に表示されているナレーション原稿を全て読み終えてしまっても、急ぐ様子も無く、ゆっくりとした口調で解説が続いている。

ああ、これはもう拷問と言ってもいい。どうにも耐えられなくなり、私は、ついに、[次へ》ボタンを押した。

 

分析してみる。

 思い返すと、研修開始直後はそのコンテンツの進化とリッチさにワクワクするものを感じた。しかしその興味はすぐに失われ、なぜこの教材のスピードに僕の生理を合わせなければならないのかと言う疑問の方が大きくなった。疑問はドンドンと大きく膨らんで行き、「もう一度始めからやる位ならば今は我慢して最後までやり切った方が特だよ」と訴える理性を押し除けながら、僕の身体の中で一杯になってもまだ膨らんで、心が押し潰されて痛くなって、破裂したワケだ。

 一度[次へ》ボタンを押してからは最初の我慢と葛藤は何処へやら、次ページからは[次へ》の連打である。結局のところ時間をかけて作られたアニメーションやナレーションの殆どを見る事は無かった。その上で終了時には、言いようのないイライラとした感覚と虚無感が残った。つまりはストレスを感じてしまったのだ。

 結局、これは未だWEB研修の進歩が不十分であると言うことを示唆しているのではなかろうか。便利に、より良きようにと改修をしているが、改善と改悪を行ったり来たりの所謂「過渡期」の状況なのかと思う。
もっと進化が進んで、個人の生理に合った演出が自動的に行えるようになれば良いのかもしれない。内容に関しては紙芝居だった頃と変わりがなく、ナレーションやアニメーションといった上辺だけの付加価値演出が追加されたに過ぎず、本質を理解する上では紙芝居の頃とほぼ変わりがないのは事実だからだ。その付加価値の演出部分が一様であるから、「受け入れる」「受け付けない」と言う新たな評価軸が出来てしまっている。演出が押し付けでは無く、受講者一人一人の生理に寄り添った形で提供出来れば、次の段階に進化したと言えるのだろう。

俺ならこうする!

 WEB研修の正統進化は期待して待つとして…。

今回の「俺ならこうする!」は、こうすると言うよりもこうなって欲しいお話。

それも、会社員のストレスマネジメントについて。

 

 そもそも会社員の「ストレス」への対応と、研修という形式があまりマッチしていないのではないかと思う。

どうしてこんな研修が行われているかを簡単に調べてみると、2014年6月に改正された労働安全衛生法で、一定規模以上の事業場で ストレスチェック制度の実施が義務づけられたから、の様だ。そしてなんでこんな義務を背負わせたかと言えば、精神障害の労災認定件数が、3年連続で過去最高を更新する状況などを受けての事らしい。つまり本当の目的は「研修でストレスの理解を深めること」では無くて、「ストレスが原因の労災認定を減らすこと」だって事だ。要は社員のストレスを緩和出来れば良いのだ。

 

 ストレスを緩和する実効性のある対策として有効な作戦は、

1.ストレスが高まっている人をいち早く見つけて、

2.その要因を取り除く事。となる。

 ストレスが高まっている人を見つける為にストレスマネジメント研修を行い、ストレスチェックという名のアンケートをやっているのであろうが、それ自体がストレスを呼んでいるのでは本末転倒だ。おそらく望まれているのは、本人も気付かないレベルでストレスを感じているかどうかを見極めて、その原因もある程度特定した上で、適切なカウンセリングが自然に行われる仕組みだろう。

 

 例えば、Apple Watchの様なウェアラブルの端末で日頃からその人がストレスをどの程度感じているかをモニタリング出来ないものだろうか?

シリーズが上がる毎に新しい何かを測定できる様になっているApple Watchならば、そのうちストレス値も計測できるんじゃないか?

今出来なくても次のシリーズではきっと出来る様になっていることだろう。

だとして、初期段階はストレス値の分量や上がり方からAIが統計学的に見合った診断を行い、個人で出来る範囲の対処法を指示する。Siriとかが。

そうした人達の中で、改善が見込めなかったり、ストレス値がさらに増加する様な、より重度のストレスを感じている人達だけをピックアップして、産業医などの問診を行うという、二段構えの対応になって欲しいと思う。初期段階はAIでの診断と言うのがミソで、Siriとかに感情なしでアドバイスされた方がきっと受け入れやすいと思うんだよな。

 

 少し未来になればこんな風になるのだろうか?

全くの門外漢の僕が、この位の未来を思いつく位だから、おそらく科学的な水準では可能なところもまで来ているのではなかろうか?

 ストレスの増大させる研修を全員に強制するよりも、ストレスを抱えるものを見つけ出して、程度にあったアドバイスやカウンセリングを行う仕組みを作って欲しいと切に願うなぁ。